サポート ・障害児とてんかん
        ・てんかん治療の終結
        ・ケトン食
        ・VSRAD

          
・インフルエンザ、予防接種、ヒブワクチン、肺炎球菌
 




リストマーク 障害児とてんかん
 

てんかん  ・症候性てんかん
       ・潜因性てんかん
       ・本態性てんかん
       ・局在関連性てんかん(部分てんかん)
       ・全般性てんかん

てんかんとは発作のあること、脳波の異常のみではてんかんとは言わない。
しかし脳波の異常から発作を推定し見出すこともある。

  てんかんによる問題―なぜ治療するのか

1.てんかんでも治療しないことは多い。

  発作があっても害がなく、また社会生活上も問題がないとき。

2.治療する必要がある場合。
 @ てんかんが害があるとき。
  a
能的脳障害 :学習の妨げになる。意識がなくなる、注意集中力が低下する。
           一時的に記憶が障害される、言葉が出なくなる。
  b
一過性脳障害 :強い頭痛、吐き気を伴う、けいれん後意識障害がある、
           けいれん後麻痺がおこる。
  c
器質的脳障害 :知的障害が起こる、運動障害が起こる、脳組織に変化がおこる。

 A てんかん発作の燃え上がりが予想されるとき。
 B 社会生活上問題があるため。
  a  倒れる、ひきつける、など介抱を要する。
  b  進学や就職に差し支える。 
  c 人に差別される。

  てんかんの診断

発作の様子:発作には種々のものがある。ただ障害者の場合には一般のてんかんと異なることがある。
       障害の種類によって起こりやすい発作がある。

       ※  ビデオが役立つ。

てんかん発作の分類

 T 
部分発作
     A単純部分発作  1 運動症状の発作体の一部のカクンカクンとする発作が多い)                  2 体感覚、特殊感覚発作(痛みやめまい)  
              3 自律神経発作(頭痛、腹痛、嘔吐)
              4 精神症状の発作(幻覚)
     B 複合部分発作 1 単純部分発作→意識障害 
              2 意識障害から始まるもの
               (呆然としたり、周囲をきょろきょろ見まわしたり)  
     C 部分発作から全身強直間代発作に移行

 U 
全般発作
     A @ 欠神発作(突然意識を失う、10秒前後)
       A 異型欠神(意識が出たり、無くなったりする)
     B ミオクロニー発作 (1発のピクリ)
     C 間代発作(カクンカクン)
     D 強直発作(ギュウと突っ張る、ぶるぶるする)
     E 強直間代発作(ギュウのあとカクンカクン) 
     F 脱力発作(前後に倒れる

 V 未分類てんかん発作
   非てんかん性発作 (てんかん発作と紛らわしい発作、仮性発作)
  1 心因性発作
   @ 転換障害(ヒステリー)
   A 長期にてんかんの続いている患者に普通に見られる発作で、
     真の発作と仮性発作が入り混じって起こる。
  2 良性の別の発作
   @ 失神発作 低血圧や精神的ショック、起立性調節障害 
   A 憤怒けいれん 泣き入りひきつけとも言う 
   B チック 一過性チックやトーレット障害
  3 代謝性けいれん 低血糖症や低カルシウム血症
  4 心臓性発作   不整脈や心筋梗塞
  5 その他      中毒、窒息、脳炎、脳脊髄膜炎など


  
てんかん診療に用いられる検査

脳波検査 :始めの診断と治療経過の判断のため、治療方針の変更などの際には必ず検査する。定期的検査が必要である。間隔は週一回から年一回までさまざまである。てんかんでも脳波にてんかん波が出るとは限らない。棘波、棘波結合、鋭波、鋭波結合などをてんかん波というが、その他除波、速波、脳波の左右差、基礎リズムの異常などがある。てんかん波(てんかん間歇期脳波)と発作波(発作時の脳波)とは異なる。

画像診断 :最近ではX線CTとMRI検査が行われることが多い。MRI検査のほうが精密なので異常の見出される率も高い。これによっててんかんが症候性のものか、特発性のものか、ある程度見分けるようにする。また何か特殊な疾患、たとえば結節性硬化症や神経繊維腫症などを発見したりすることもある。よく見られるのは脳の形成異常である。また脳腫瘍や限局性の異常が見出せれば脳手術の対象となることもある。

薬剤血中濃度測定 :抗てんかん薬を用いるときに適切な使い方をする必要があ<る。年ほど前までは体重や年令を指標にし、実際に使ってみて調整をするというやり方をとっていた。しかし実際には人によって同量の薬でも効き方に大きな違いがあることが次第に知られてきた。したがって科学的な方法つまり薬剤濃度によって投薬量を調節するのがよい。しかし同じ理由で濃度が同じでも同じだけ効くとは限らない。原因究明および副作用チェックのための血液検査および血液生化学検査病気のために低血糖や低カルシウム血症がないか、水を飲みすぎて低ナトリウム血症ではないか、アミノ酸や有機酸の異常はないか、心電図、染色体の異常はないか。また副作用として血小板や白血球の減少はないか。GOTやGPTの増加や血液アンモニアの増加はないか

   てんかんの原因
  大きく分けて3種類ある。

 1 体質的な原因 :数は少ないが遺伝的なものもある。反射てんかんの>大部分も。
 2 脳に異常がある:ニューロンの遊走異常、形成異常、腫瘍性異常、
   脳の破壊(外傷、出血、虚血―梗塞、栓塞、心停止など、中毒、溺水)
 3 燃え上がり現象:電気ショック、てんかん治療の不徹底、脳の廃用性萎縮(アポトーシス) 
           視力障害、自閉症、知的障害代謝異常 
           アミノ酸インバランス 

  
てんかんの治療

 治療の目的 :QOLの改善、将来の可能性の確保のため。
  1 日常生活療法 規則正しい生活、アルコールを飲まない。
            脳をよく使う、スポーツなど。
  2 薬物療法 抗てんかん薬の内服―今までの薬(経験的に作られた)と 
         これからの薬(分子生物学の知識を利用して創薬したもの)
    薬の濃度―投薬量と持続時間―半減期、一日の服用回数 
        (効き目の短いものは服用回数が多い) 
         初回量と維持量(薬によってかなり違いがある) 
         部分てんかんの薬と全般てんかんの薬―抗てんかん薬のスペクトル 
         単剤療法と多剤療法、抗てんかん薬の相互作用
        (数が増えるほど作用の理解が困難になる) 
         投与法 :錠剤、散剤、シロップ剤、注射、座薬。
  3 食事療法ケトン食療法
  4 外科手術療法てんかん焦点を切り取るあるいは切り離す。
    てんかん放電が広がらないように連絡路を切断する。

  


 ※ 医学的治療と社会的治療について
   発作を起こすことがハンデイキャップになる人は強めの治療を必要とする。

   てんかん薬の副作用

 1 中毒症状      :眠気、ふらつき、複視、脱力、高アンモニア血症など
 2 過敏症状      :薬疹、骨髄抑制、アレルギー性肝炎、膠原病など
 3 酵素誘導による異常 :薬剤性骨軟化症、大球性貧血、歯肉腫大、新生児出血傾向
 4 狭義の副作用    :多毛、便秘,感覚異常
 5 胎児毒性      :口唇裂、神経管欠損症(二分脊椎、頭蓋裂)


   
治療の経過 

通常の本態性てんかんでは、発作を起こしやすい年令があるので、その時期を過ぎるまで治療する。多くのてんかんは小児期に山があり、10才を過ぎると収まってくることが多い。傷害を受けた脳ではその時期が15才過ぎまで続く。アポトーシスや燃え上がりを起こしたものではさらに遅れ、発作がおさまってくるのは中年過ぎになる。実際のやりかたは、薬剤療法の場合、初回量から始め漸増し、維持量に至る。維持量は発作の抑制と薬剤濃度により決める。 6ヶ月毎、成人に達してからは12ヶ月毎に脳波検査を行い 3年以上発作がなく、予定した年令に達し、脳波が確実に正常化したら減量開始し、定期脳波が許せばさらに減量して中止にいたる。抗てんかん薬中止後は念のためにもう一度脳波を検討してよければ一応治癒とする。再発すればもう一度治療を再開する。治療を打ち切るのはリスクで治療が長ければ再発は少なく短ければ再発は多い。

  難治てんかん 
  年令依存性てんかん性脳障害
  重症ミオクロニーてんかん
  ウエスト症候群
  レンノクス・ガストー症候群
  特に結節性硬化症厚脳症が難治
  成人の複合部分発作―精神運動発作

 難治てんかんの対策
  治療のバランスを考える。
  時にはケトン食療法や外科手術を考える。
  発作が止まらないときには危険の回避を考える

 
(頭部保護帽、入浴時の監視、スポーツの指導、エピカードの携帯など)

精神運動機能

     


 
その他のてんかんの特徴
 睡眠とてんかん発作 :起きぬけの発作(朝食時や夕食時)
            寝がけ起きがけの発作
            いつでも起こる発作

  
発作を起こしたときの対策

全身けいれんの場合

普通はすぐに収まることが多いので慌てないことが大切である。まず安全な所へ寝かせるのがよい。小さな子なら抱いて運ぶ。大きな子なら引きずってでも安全な所へ運ぶ。布団や敷物などの柔らかいものの上に寝かせられるとよい。通常救急車を呼ぶ必要はないが、長く続くようならば、例えば15分以上亘ってひきつけが続くならば、救急車を呼ぶのがよい。もし主治医からけいれん止めの座薬を貰っていればそれを使用する。口の中にスプーンや棒を入れたりしてはならない。発作中は必ず付き添っていて、衣服を寛げたり、顔を横に向けて嘔吐物を誤嚥しないようにする。熱性けいれんのように軽い発作では1分程度の全身強直発作でとまりすぐに意識が戻るが、2−3分にわたる全身強直発作では終末睡眠と言って、意識を失い30〜60分位で次第に意識がもどってくる。このとき一見意識が完全にも戻ったように見えてもまだ軽い意識傷害が続いていて、監視していないとふらふらとどこかへ行ってしまうことがあるので注意を要する。怪しいと思ったら、名前や今いる場所を聞いたりして、意識が完全に戻っているかを調べるとよい。意識が明瞭でなければ監視下に置く。このとき手荒く取り扱うことのないよう注意する。 

部分けいれんの場合
半身けいれんを含め部分けいれんでは全身けいれんほど緊急感がない。安全なところで寝かせておけばよい。しかし痙攣によく慣れていて自分から大丈夫ですと言うときには無理に寝かせる必要はない。部分けいれんは長引きやすいので、長く続くようなら病院につれて行くのがよいが救急車の必要はない。半身けいれんの後では一時的な半身麻痺が残ることがあるが、数時間で完全に回復することが多い。 

突然意識を失う発作の場合
障害者の場合には、このような発作は複合部分発作>精神運動発作であることが多い。急に顔色が変わって無表情となり、意味のない行動をすることが多い、あるいは口をピチャピチャしたりする。このようなとき発作だからといって寝かせようと思って手を持ってひっぱったり、大声で呼びかけたりすると怖がった暴れて手におえなくなったりするので注意を要する。怖がらせないように優しく接してやるのがよい。

転倒する発作
主としてレンノクス症候群の発作のうちの脱力発作と言われるものである。突然前倒して頭や顔を打ち、時には皮膚が割れて出血したり、歯を折ったりすることがある。対策は転倒による怪我の防止が第一である。頭部保護帽倒れ方によって作り方をかんがえるの装用、尖ったものを持たないこと、時には机や家具の尖ったところを緩衝材で蔽うなどが必要なこともある。また時には脳外科手術(脳梁切断術)によって発作を軽くすることも行われる。

   生活関連の指

薬の飲み方
1 服用の時間 :多くは1日2回朝食後と夕食後である。しかし発作の起こりやすい時間に合わせたり、作用が短いので1日3−4回に服用するものもあるまた朝、昼としたり、就寝前となっているものもある。
2 服用はなるべく忘れないようにする必要がある。怠薬をするとてんかん重積状態になり生命に危険が及ぶ恐れがある。薬は一回分づつに分け、日付と朝夕の別を記入し飲み忘れたらすぐ分かるようにしておくのがよい。
3 薬が切れて、飲めないことを考えて1週間分くらいは常に予備を作っておくとよい。予備以外の薬がなくなったら次の薬を手配し、それが手に入るまでは予備でしのぎ、新しい薬でまた予備を作っておく。
4 飲み忘れたときには、気づいたときに飲ませる。薬によっては次の服薬のときに2回分一緒に飲む。
5 抗てんかん薬は空腹時に服用すると早く効果が出やすいし、脂溶性のものが多いので牛乳と一緒に服用すると吸収が早くなる性質がある。
6 他の薬と併用するとき 多くの場合は問題がないが、経口白癬薬などは併用が難しい。(抗てんかん薬同士の併用はかなり相互作用があり難しいがこれは医師の責任の範囲である)
7 食事が取れなくなると薬の分解が遅れるようになり、薬が効きすぎてしまうようになることがある。
8 薬をごまかして飲ませることはいけないが、口直しを与えることはよい方法である。 

日常生活
1 規則的な生活がよい。睡眠不足はてんかん発作を誘発する
2 適度な運動が大切である。できれば俊敏性を養うスポーツがよい。水泳もよいが、普通に監視する、特によく監視する、水の中でも付き添うなどの配慮を必要とする。
3 アルコールはけいれん誘発作用があるので禁止する。酒・ビールなどだけでなく、ブランデーケーキなどにも注意する。
4 食事は十分なビタミン類を含むように野菜などをよく食べる。食事だけで足りないときにはビタミン剤を添加する。
5 テレビを視聴するときは、よく調整した画面を離れた場所から見るようにする(約2メートル以上)。できればあまり長い時間でないほうがよい。
6 予防注射は必要なものは受ける。
7 入浴するときは発作が止まっている患者でも必ず監視をつける。 

精神衛生
1 てんかん患者は神経が鋭いのでたとえ知的障害の人と言えども、プライドを傷つけないように配慮を要する。
2 発作が起こるという暗示をかけないようにする。仮性発作を誘発することのないように。
3 治療がよく効いて発作が止まると神経症的症状がでることがある。(強制正常化と言う名前がついている)。それがひどいと幻覚や妄想が出現することもある。このときには精神科的治療が必要になる。








           
                  てんかん治療の終結 
                                                                 松戸クリニック 丸山 博

   はじめに

「てんかん治療の終結」というのはわかったようでわからない非常にあいまいな分野です。こればかりは人のデータをもってきても役に立ちませんので、私どものところの状況をお話しいたします。その点をご承知おきください。

ご存知のように、てんかんには非常に難治なもの良性で治ってしまうタイプがあります。難治なてんかんの方がてんかん協会に集まりがちではあります。抗てんかん薬を飲んだらすぐに発作がなくなり、ある程度の年数が経ったら抗てんかん薬を止められる方は、てんかん協会には集まらないようです。難しいタイプのてんかんの方は、「うちの子の病気をみると、そう簡単な病気ではない」とお考えになると思いますが、全体としてみるとてんかんは非常に良性の病気です。だいたいの方がある一定の年数の服薬後に治ります。あるいは、治療もしないで様子をみているだけで治ってしまう方も多いです。従いまして、難しいてんかんを診ている施設は、てんかんは非常に難しい病気とされますし、一般の小児科などで扱っているケースの大部分は非常に状態が軽いものですから、そういう施設では成績が非常によろしいということになります。どういうわけか昔から私のところは“てんかん”で名前が売れておりますことから、割合と難しいてんかんの方が受診されます。そのために、治療も難しい方が受診されますので、それを終結までもっていくまでには非常な力がいります。

てんかんという病気は、医者に「治療してください」とかかるだけで、治ったら「さようなら」ということも多いのですが、難しいてんかんの方は、それだけではなかなか治療終結まで持ち込めません。やはり、医者と患者さんが協力しあって治していかなければいけません。中には一生涯薬を飲まなければならない方もいらっしゃいます。そういう方はそういう方で、そういうものだと思って、自分の障害をできるだけ“社会的障害”にしないようにすることが大切であろうと思っています。


   てんかんの治癒率

そういうわけで、てんかんの治癒率に関してはさまざまです。私どものところでも、はっきりとした統計をとったことはございません。従いまして、漠然とした数値しか出てきません。
私のところにおかかりになる方の
約80パーセントが、適当な時期に治療が終結します。残っていくのは20パーセントです。

   治療終結の方法

皆さん方はどういうふうに治療は終結していくのだろうかとお考えになると思うのですが、てんかん治療の終結のやり方や期間は、施設によって、また医師によってさまざまです。私のところは、激しい医者と非常にのんびりした医者の中間ぐらいの方法をとっています。

どのようなやり方をしているかといいますと、てんかんは薬物療法が中心になりますから、適当な抗てんかん薬を使います。もしくは抗てんかん薬は使わずに経過をみるということになります。皆さんご存知と思いますが、てんかんの方の脳波をとりましたら百パーセントてんかん波がでるわけではありません。一般にいわれているのは、てんかんの方の1回だけの脳波では、てんかん波が出る率は約40パーセントです。繰り返し脳波をとりますと、約80パーセントの方にてんかん波がみられるようになります。しかし、百パーセントの方にてんかん波が見られるわけではありません。脳波は正常のまま、しかし発作が止まらないという方もいらっしゃいます。

そういういろいろなてんかんの方を診まして、治療する・しないを決め、経過をみていくわけですが、治療を進めていくうちに発作がなくなります。うまく抗てんかん薬が合いますと、ピタッと発作がなくなるわけです。発作がなくなりましたら、その服用量をずっと続けていきます。子どもの場合は、身体が成長するにつれて、抗てんかん薬の量を増やす場合もありますが、ある程度身体が大きくなりましたら、発作が止まれば抗てんかん薬の量はそのままにしておき、血中濃度が下がってきても、同じ量で済むことが多いです。そのまま経過をみていき、3年以上発作のない期間があり、その間に続けて2回、脳波(子どもの場合は半年に1回とります。大人の場合は1年に1回とります)にてんかんに関係する波形がみられなかったら、減量を開始します。1種類だけの抗てんかん薬を飲んでいらっしゃる方は、半年ごとに三分の一ずつ減らしていきます。抗てんかん薬を飲まなくなってから半年後に脳波検査をして、問題がなければ、治療を終結にします。

中には、抗てんかん薬を減らすスピードを1週間に1回とか1ヵ月に1回というように大変に速いスピードで減量する医師もいますが、私の意見では、それは得ではありません。なぜかというと、薬の止めた効果が現われるまでに時間がかかるからです。数ヵ月はかかります。どんどん抗てんかん薬を止めて、治療中止に至って、数ヵ月もしくは1年ぐらい経って発作が起きるということはしばしばあります。半年ごとに薬を減量していっても止めてから発作が出てくることはあります。ですから、発作の落ち着く様子をみながらゆっくりと減量していったほうが良いです。

しかし、発作が止まっているかもしれない人に、無駄に抗てんかん薬を飲ませ続けるというのはいいことではありませんので、なるべく早めに、皆さん方が納得できる時期に抗てんかん薬は止めたいと思っています。“納得できる”というのは、リスクが一定のもので、患者さんが承知できる程度のことだと思います。私どものところで、このようなやり方をとりますと、薬を止められた方の8パーセント程度が再発します10人に1人ぐらいの再発でしたら、納得していただけるのではないかと思っています。

   再発した場合は

再発したとしても、再び治療を始めて、再度の減量に挑戦していただければいいわけです。いつもそうするわけではないですが、発作が再発された患者さんに再度の治療中止に挑戦していただく場合には、発作のない期間を5年間にしています。初めの治療終結の時には発作のない期間を3年間としていますが、少し長めに設定してから治療中止に再挑戦していただきます。3年を5年にする理由は特にありませんが、単にそうしているだけです。

先ほどもいいましたように、治療を医師任せにしているだけでは、病気は良くなりませんので、今日お話しいたしますことを頭においていただけますとありがたいと思います。

   てんかんの種類

てんかんにはいろいろな種類があります。本態性のてんかん症候性てんかんがあります。本態性てんかんとは、特に理由のない、発作を起こしやすい性質の人です。最近ではゲノム研究がおこなわれるようになりまして、ある形のてんかんの方とそうでない方の遺伝子を調べまして、遺伝子多系といいますが、傾向が多い遺伝子が見つかりましたら、その遺伝子の働きを解明して、てんかんの原因を探るということをしています。今のところ、これこそてんかんの遺伝子というものは見つかっていません。いくつかのてんかんの遺伝性が認められていますが、これは本態性てんかんの中に入ります。

最近わかってきたのは、1歳〜2歳代に頻発する熱性けいれんです。これはてんかん症候群のひとつですが、熱性けいれんの機序は神経細胞膜にあるナトリウムチャンネルに関係しているということがわかってきました。てんかん発作だけでなく、私たちが話したり手を動かしたりするのは神経細胞の電気現象を使っておこなっているわけですが、電気現象は細胞の内外のイオン濃度の勾配によって決まります。細胞内外のイオン勾配が下がるとそこに電気が発生して、そして神経現象が起こるわけです。細胞の中にはカリウムがたくさんありナトリウムが少なく、細胞外液には、ナトリウムがたくさん含まれていて、カリウムがごく少量です。神経細胞膜にはナトリウムを取り込むチャンネルがあるのですが、熱性けいれんを起こしやすい人はそのチャンネルの構造が他の人と違っているのです。従って、熱性けいれんは遺伝性がありまして、小さい時分に熱性けいれんを起こしていた親御さんの子どもさんは熱性けいれんを起こしやすいということがわかっています。熱性けいれんはそういう機序によるものです。

しかし、たいていのてんかんは遺伝性がはっきりしていません。親御さんが発作を起こしたことがないのに、子どもさんがてんかんになるというのが普通です。これからゲノム研究が進んでいけば、多少発作を起こしやすい“質”の人とかが見つかるようになるかもしれませんが、特定のてんかんの遺伝子は見つからないと思っています。しかし、発作をもっている方の中には、非常にひきつけやすいタイプの方が多く、そういう方が実際に発作を起こします。

   発作をもつ人の気質

昔から、私は発作をもっている方の気質について調べています。歴史上有名な人で、ジュリアス・シーザー、アレキサンダー、ナポレオン、マリア・テレジア(ハプスブルク家の女王)などはてんかんであったことがわかっていますが、私はてんかんの方はひとつの気質をもっていると思います。30年ぐらい前に学会で発表しましたら、「てんかんを特別視している」と叱られたことがあります。良いことをたくさん誉めたのに、それでも「てんかんを蔑視している」といわれると、そうなのかなぁと思ってしまいました。誰もナポレオンやジュリアス・シーザーをけなす人はいないと思います。

発作をもつ人は頭の回転が良く、話していてもすぐにわかってしまうけれども、そそっかしくてよく間違えるところがあります。運動は好きなのですが、反射神経は得意ではありません。5〜6歳のてんかんの子どもが受診した場合、私はその子の膝小僧を見ます。たいてい膝小僧に傷があります。いきなり走り出そうとして、転んで膝を打つものですから、たいてい膝小僧に傷があります。敏捷性の乏しい子どもが多いです。また、あまり辛抱強くはないタイプが多いです。パッと思いついて行動するのは得意ですが、じっくりとひとつのことに取り組むことが苦手です。哲学者には向かないと思います。そういう気質がある人が発作を割合と起こしやすいと思います。

私はある小学校で脳波の健診をしたことがありまして、脳波にてんかん波が出ている子がクラスで一番の成績をとっていました。発作を起こすのは困るけれども、頭の回転が速いという特性があることはいいことです。そういう方のてんかんは、いわゆる本態性てんかんです。本態性てんかんは子どもに特に多いてんかんです。5〜6歳ごろに発作が始まり、思春期ごろに終わってしまうてんかんが多いです。例えば欠神てんかんも本態性てんかんです。欠神てんかんは、10秒〜20秒間、意識がフッとなくなってしまい、手に持っていたものを落としたり、眼をパチパチさせたりする発作をもつものをいいます。欠神てんかんは、5〜6歳から始まり12歳ぐらいまで続きます。その他に、全身けいれんを朝起きがけに起こすてんかんも本態性てんかんです。これも5〜6歳で始まり1213歳で終わるものが一番多いです。中には、若年性ミオクロニーてんかんのように、思春期に発作が始まり、治療が終わるのが初老期もしくは中年期になる方もいらっしゃいますので、全部が子どもばかりではありませんが、本態性てんかんの7〜8割は子どもの時期のものです。

もう少し大きくなってから起こるてんかん、例えば10歳とか1415歳に始まったてんかんは、すぐに止まるわけにはいきません。1213歳から始まった若年性ミオクロニーてんかんもそうですが、その他の全身性けいれんは、発作の起きる間隔が遠いです。1年に1回とか2年に1回とかしか発作が起こりませんが、その欲さがなかなか終わらなくて、発作はたまにしか起こらないのだからいいだろうと思っていると、実社会で生きていくうえで発作が起こると困るもので、年に1回起こる発作が障害になることもしばしばあります。

症候性てんかんというのは、頭に病気があっててんかんが起こるてんかんです。これはなかなか治りにくいです。例えば、私どものところに多いのは、結節性硬化症という遺伝性の病気です。この病気で起こったてんかんは、治療に対しての抵抗性があって、発作が止まり難く、延々と治療を続けることが多いです。その他の症候性てんかんとしては、頭の外傷でてんかんになったとか、脳炎や脳膜炎でてんかんになったとか、水に溺れててんかんになったなど、脳が破壊されてその後にてんかんになったものです。これは治療終結がなかなか難しいです。

  年齢依存性てんかん

年齢依存性てんかんというものがあります。年齢依存性てんかん性脳障害というのは、ごく小さい時期に発作が起こり、それによって脳の障害が受けるものです。例えばウェスト症候群(点頭てんかん)です。点頭てんかんは、だいたい6ヵ月ぐらいから発病します。発病後、発達が退行していきます。お座りをして、ニコニコしていた赤ちゃんが、発作が起こり始めると座れなくなり、笑顔も失せ、お父さんやお母さんのこともわからなくなってしまいます。このように発達が退行するてんかんがあります。これも一種の症候性てんかんといっていいと思います。

元々は本態性てんかん(原因のないてんかん)であったものが、てんかん性脳障害によって症候性てんかんに変わることがあります。これもなかなか治療が困難です。

  え上がり現象

年齢依存性てんかん性脳障害の例でおわかりのように、てんかん発作は放置しておいてはいけません。予後もよくありません。発作が起こり治療を始めると、患者さんが勝手に薬を止めてしまうことがあります。長い間薬を飲んでいるもので、薬に疑問をもち、発作が起こっていないのにどうして薬を飲まなければいけないのかと思って、薬を止めてみるということは多くの患者さんが経験することです。その抗てんかん薬が効いている場合には、薬を飲まなければ発作が起こってしまいます。そういうふうにして発作が起こりますと、今まで発作を止めていた薬の量では発作を止めることができなくなります。1回発作が起こると、発作の筋道がついてしまって、慌てて薬を飲み始めても発作を止められなくなります。量を増やさなければなりません。こういうのを“燃え上がり現象といいます

これは動物実験で見つかった現象です。実験動物の扁桃核あたりに電極を埋め込んで、発作を起こさない程度のごく軽い電気刺激を30日ぐらい毎日与え続けていると、そのうち通電した途端に発作を起こすようになります。それを更に繰り返しますと、電極を抜いてしまっても、勝手に発作が起こるようになります。それを“燃え上がり現象”といいます。つまり、発作が起こることが次の発作を誘発する原因になるわけです。

  発作が起こると脳に傷がつく

人によっては「てんかん発作が一度でも起こると、脳に傷がつく」といわれることがありますが、そういうことはまずありません。燃え上がり現象が別ですが、発作が起きても回復する時間がたっぷりとあれば、脳は元に戻ります。

てんかん発作を見たことがある方はおわかりだと思いますが、倒れて、全身けいれんを起こした患者さんのたいていの方は、発作後に30分〜1時間眠ってしまいます。これは通常の睡眠ではなく、てんかんという衝撃による意識障害です。意識障害が30分から1時間続きます。そして、気がついてみると、患者さんは発作を起こしたことを忘れてしまっています。自分がどこで発作を起こしたのかを忘れてしまっています。これを“逆向性健忘”といいます。

発作が起きてからしばらくの間は、頭が痛んだり、場合によっては嘔吐します。これはてんかん発作を起こしたために血管が痛んで、そこから体液が漏れて、脳の容積がふくれたためです(脳浮腫といいます)。そのために頭痛がしたり嘔吐したりするわけです。これはやはり一種の脳の損傷といえますが、半日から1日経つと頭痛や吐き気もなくなり、元に戻ります。ただし、元に戻りきらないうちに次の発作がくると、回復しきらないうちに次の損傷が起こりますので、やがて神経細胞の脱落が起き、脳の障害に結びつきます。ですから、2ヵ月に1回程度の発作が起こる方は、発作のために頭脳が低下するということはありません。しかし、燃え上がり現象がありますから、2ヵ月に1回の発作も起こさないに越したことはありません。

  治療開始は早いほうがいい

従って、てんかんを早く治すためには、できるだけ早く治療を開始したほうがいいです。特に、ウエスト症候群などは、治療が遅れると、治りにくくなります。今から30年ぐらい前に、点頭てんかんの予後を私の同僚が調べたことがあります。その時代は点頭てんかんについてよく知られていなかった時代ですから、随分治療が遅れた方が多く、知能が正常に戻った方は5パーセントでした。95パーセントの方は大きな知能障害を残したという結果が出ました。今は、点頭てんかんはすぐに治療を始めますので、予後が良く、知能が正常か境界線程度までの方の率は40パーセントぐらいです。約半数が回復すると考えられます。このことからも早期治療が大切かということがわかります。なるべく早く治療を開始したほうがいいですし、きちんと治療はされたほうがいいです。先ほどのように、途中で治療を止めてしまったりすると、燃え上がり現象が起こり、それだけ治療終結に至るまでの期間が伸びてしまいます。ですから、医師がきちんと診断し、その患者さんに合う薬を適切に処方し、患者さんに「きちんと飲みなさい」といい、患者さんがいうことをきくだけの力のある医師である必要があります。

本態性のてんかんに関しては、早い時期に発見し、治療し、きちんと治療して、さらに、患者さんが治療的な生活をして、なるべく早く薬を飲まなくても済むようになることが一番良いわけです。

では症候性てんかんは薬が止められないかといいますと、そうではありません。やはり症候性てんかんの方は一生薬を飲む可能性は高いのですが、2割ぐらいの方は薬がいらなくなります。先ほどのウェスト症候群の方も、成人になるまでに薬を飲まなくなる方が最近は増えてきています。ですから、けいれんを起こす要因が非常に強くても、神経が再構築されれば、発作はかなり抑えられます。症候性てんかんの方でも良い結果になる方もいらっしゃいます。ですから、医師はきちんとした治療し、かつきちんとした生活指導をしなければならないわけです。

  薬の副作用

しかし、世の中には服薬したくなくなるような要因が多すぎます。“薬害”などという記事を読めば、自分の薬に疑問をもつのが当たり前です。副作用の羅列だけを見ていますと、誰でも薬を飲みたくなくなります。それでも患者さんに服薬するようにいう医師はよほどの悪者のように感じられてしまいます。医師は何とか患者さんの役に立つように治療をしようとしているわけですが、まれにしかない副作用まで全部を羅列されますと、誰も服薬をしたくなくなります。レストランの主人であれば「うち店で出している野菜には1回だけ有機リン化合物がかぶせています。有機リンは時々目が見えなくなったり、いろいろな病気を起こすことがあります。それでも食べますか?」とはいいません。しかし、医師は薬の副作用についても患者さんに説明することになっています。副作用の話をしながら服薬を患者さんに勧めるというのは、いかに困難なことかおわかりになると思います。

もちろん患者さんも正確に副作用の実態を知ることは大切ですが、それが百パーセント起こるような錯覚はもたないことが大切です。副作用が起こったら、なるべく早く発見して、対応をとればいいわけです。

現実にどのぐらい薬の副作用は起こるのでしょうか?薬の副作用にはいろいろなものがあります。例えば、身体に合わない、アレルギー反応が起きる、その典型的なものが薬疹です。フェノバルビタールやカルバマゼピンやフェニトインは薬疹の頻度が高いです。どのぐらいあるかといいますと、0.5パーセントぐらいです。200人に1人の発現率です。私どものところでも、薬疹は起こります。薬疹が出たら、その薬を止めます。薬を止めても、薬疹が出る時には、熱が出て、身体中に発疹が出て、だるくて、非常に不愉快なものです。薬を止めたからといって、症状がすぐに消えるわけではありませんで、2週間ぐらい続きます。別の薬を使いますが、薬疹の出る人は次の薬にも薬疹が出やすいです。別の系統の薬を出しても、また薬疹がでることもあります。

薬を替えて、その薬でうまく治療ができればいいのですが、どうしても第一選択の薬でなければ治らないという場合には、減感作療法をとります。100万倍ぐらいに薄めた薬から始めます。ごく少量ですとアレルギーは出ませんから、100万分の1を何回か飲ませて、50万分の1にして、次に25万分の1にして10万分の1にして、だんだん濃くして、やがて治療量にすることもあります。

また、気づかないうちにいつの間にか副作用がでているということもあります。肝機能といっても、GOTとGPTはアレルギー性肝炎でないと起きませんから、滅多に上がらないです。バルプロ酸ナトリウムを飲むと、アンモニアが非常に上がります。アンモニアの血中濃度は、100ミリリットルあたり、1070ミリグラムになります。バルプロ酸ナトリウムを飲んでいるとそれよりも値が高くなります。130マイクログラムでもバルプロ酸を使います。人によっては200マイクログラム、私のところでは300マイクログラムの人もいます。アンモニアが上がっても抗てんかん薬を減らせば下がります。別に後に障害を残すことはありませんので、アンモニアが上がることと、発作が止まることを秤にかけて考えます。アンモニアが上がると、風邪をひいたりすると、カンセイ脳症といって意識がおかしくなることがあります。そういう危険性があることと、発作が止まっていることのどちらが患者さんにとっていいのかを考えます。300マイクログラムまでアンモニアが上がっている方は、その薬を飲むと頭がはっきりして、親御さんとの応答もしっかりできるものですから使っています。

それから白血球が減るのもバルプロ酸ナトリウムの特徴です。バルプロ酸ナトリウムによる白血球減少は容量依存性です。骨髄が冒される場合は、アレルギー性に冒される場合と、骨髄で血球成分が作られるのが妨害されるものとがあります。アレルギー性のものは怖いです。それが進むと、骨髄が働かなくなり、貧血を起こしたり、白血球の減少が起こって抵抗性がなくなったりするわけですが、容量依存性のものは、その物質があると白血球を作りにくくなるだけですので、容量を減らせば元に戻ります。従って、様子を見ながら使うことになります。私たちがバルプロ酸ナトリウムを使う時には、白血球の数が2000台になると、バルプロ酸ナトリウムを減らします。3000を超えると、このぐらいならいいかと思って使っているわけです。そういうことをしながら、副作用をなるべく避ける、副作用があってもその性質をわきまえてコントロールしながら使用を続けていくわけです。

  他の薬との併用

他の病気になった時に、例えば風邪薬や胃腸の薬などですが、「併用していいですか?」と訊かれます。先生によっては、「止めときなさい」といわれます。てんかんの専門医ですと、てんかん重積を起こしたら困りますので決してそのようなことはいいません。しかし、一般の先生方の中には、複合して服薬することに不安を感じる方がいらっしゃるので、「抗てんかん薬を止めとけ」とおっしゃることがありますが、それは危ないです。例えどんなことがあっても、抗てんかん薬は止めるわけにはいきません。きちんと服薬する必要があります。また、患者さんご自身が両方の薬を飲むことに不安を感じて止めてしまうこともありますが、それは主治医の先生に確かめていただく必要があります。

  睡眠不足の弊害

医師は、正確に診断し、治療をおこない、治療を続けるように患者さんを促すことができなければなりません。一方、患者さんとしては、できるだけ治療をきちんと守ること、睡眠を十分にとることが大切です。薬を飲んでいても発作を起こす方の場合は、だいたい生活が乱れて睡眠時間が足りない人です

睡眠時間が足らないとどのように具合が悪いかといいますと、日中に活躍して乱れた身体の調子を睡眠によって回復しているわけです。ですから、睡眠が足りませんと身体の調子が回復しません。どういうふうな症状になって現われるかといいますと、眠くなるのは当たり前ですが、自律神経症状となって現われます。例えば暑さ寒さの感じが悪くなります。暑いのに冷え冷えとしてみたり、寒いのにカッカッとしてみたり、変な感じが現われます。あるいは下痢したり吐いたり、食欲がなくなったり、心臓がドキドキしたり、不整脈が起こったり、いろいろなことが起こります。人間の頭の中には発作を止める働きが備わっているわけですが、そういうものにも障害を及ぼして、発作を起こしやすくさせます。たいていの方は寝不足で発作を起こします。

   飲酒の弊害

もうひとつはお酒です。お酒はけいれんの誘発剤です。お酒を飲んで発作を起こされた方は経験がおありだと思いますが、お酒を飲んだ明くる日に発作を起こします。“アルコール性禁断性発作”といういい方をする場合もあります。それではアルコールを飲み続ければ発作が起きないかといいますと、そうではありません。アルコールそのものが発作を誘発します。アルコールは少量ですと、脳に対して刺激作用があります。脳にけいれん誘発性の刺激として作用します。ある一定量を超すと、次は鎮静作用が起きます。お酒は飲み始めは陽気になりますが、飲み続けるとやがて眠くなります。にぎやかな状態は刺激作用です。「少し飲むだけならお酒は構わない」という方もいますが、少しだけお酒を飲んでいると、飲んでいる最中に倒れる可能性があります。食前酒にワインを半グラスほど飲むのは非常に危険です。宴会の最中に倒れます。乾杯のビールを一杯飲みますと、すぐに血中濃度が上がりますから、鎮静効果に入り、その際には発作は起こりませんが、だんだんアルコール濃度が下がってきて、明くる日ぐらいになると興奮期になって倒れます。もっと多い量のアルコールを飲むと、3日後ぐらいに発作が起こります。「少々のお酒はいいですよ」といってあげたいところですが、そういうことを考えると、「いい」というわけにはいきません。お酒は駄目です。

   廃用性萎縮によるてんかん

人間の頭の神経細胞数は、生まれた時が一番多いです。それからどんどん数が減っていって、大人の脳が形作られます。子どもの時代から神経細胞の数が増えるということはありません。減っていく一方です。それは人間の身体はそのように作られているからなのです。余計に作られたものを削って作られます。例えば私たちは5本の指をもっていますが、これは後から指が生えてきて5本になったわけではありません。お腹の中にいる時にはおしゃもじのような形をしています。ところが、指と指の間の細胞が、ある時期になると勝手に死滅して落ちてしまうので、間が分かれて5本の指ができあがるのです。頭もそうです。最初はたくさんの神経細胞が作られていて、使わないところは削ってなくなり、大人の脳になります。それが顕著な例は、生まれた時から目の見えない子どもです。先天性の失明者の脳は、生まれた時の脳は健常者と変わらない大きさですが、小学校の中等ぐらいになりますと、容積が三分の一ぐらいに小さくなります。視覚刺激が後頭葉に送られないので、そこの神経細胞は不要なものとして勝手に脱落し、後頭葉の容積が三分の一に落ちてしまいます。そのせいだと思いますが、先天的に目の見えない子どもの9割がてんかんを発症します。それは廃用性萎縮によるてんかんの発生だと思います。これは私のライフワークです。

その他にも例があって、重い自閉症の方の半数が、思春期過ぎにてんかん発作を起こします。自閉症の方は、前頭葉を使うことが生まれつきできにくい障害です。好奇心をもつ、人のやることを模倣して探求心をもち突き詰めていくとか、ものの意味を理解するなどが、自閉症の方は困難です。学齢前の自閉症の方の前頭葉の大きさは健常の方と同じです。しかし、大人の自閉症の方の前頭葉は、健常者に比べて2割ぐらい小さくなっています。これも脳の廃用性萎縮です。カナーが、自閉症の子がてんかんを発症しやすいと発見した時には、自閉症は脳の病気があるためにてんかんになると考えられたのですが、私の意見では、脳が廃用性萎縮を起こしたためにてんかんを発病したのです。一般の方も、寝てばかりいる方はてんかんの発症がおおくなりますから、頭は使わないといけません。

私は今、何とかして自閉症の子どもに頭を使わせようとチャレンジしています。ひとつはオペラント学習といって、ご褒美を与えながら何とか前頭葉を使わせる方法です。この課題ができたらご褒美を上げるやり方をすると、自閉症の子どもはイヤイヤながらでも前頭葉を使うようになります。もうひとつは、感情を教えます。嬉しいとか、悔しいとかそういう感情によって前頭葉を活性化させる方法です。そういうことを試みています。今、挑戦中ですが、結果が出てくれると嬉しいと思います。

   テレビゲームとてんかん

みなさん方もそうで、頭を使わないといけません。頭を使っているつもりで使っていないのも困ります。その代表的なものがテレビゲームです。最近、頭のどの部分を使っているかを調べる検査法が開発されました。fMRIとか赤外線で見る方法などで脳のどこの部分が使われているかを調べられます。意外なことがわかったのは、テレビゲームをやっている最中は頭を全く使わないということです。テレビゲームは瞬間的な反応でしかないので、脊髄レベルでこなしているのです。今の子どもたちは、テレビゲームばかりをしていることを恐れています。

ましてやてんかんの子どもたちがテレビゲームばかりをやるのはよくありません。あれをやってもいけない、これをやってもいけないと小言ばかりをいっているようですが、やることはやったほうがいい、やるべからざることはやらないほうがいいです。テレビゲームをやるよりは、スポーツでもしたほうがいいです。図鑑でももって散策するなど、頭を使うことはなんでもあるではありませんか。

  光の重積効果

いろいろな刺激がありますが、テレビはよくありません。臭いはすぐに慣れます。香水をつけた人が通り過ぎると感じますが、側にずっといるうちに慣れてしまいます。数分間で慣れてしまいます。人間の感覚が順化されるわけです。音は数分ではありませんが、例えばガード下で過ごす人は電車の音が気にならなくなります。数時間そこにいると、人の話が聞こえずらいのは困りますが、騒音自体は気にならなくなります。しかし、光刺激はそうではありません。チカチカした光は見ているうちにだんだんまぶしくなります。余計に感じるようになります。それを光の重積効果といいます。従って、チカチカした光を見ていると、光を感じる脳の場所がだんだん敏感になってきてしまいます。光過敏性てんかんの人が、テレビをしばらく見ていなかったら脳波が良くなっていたのだけれども、テレビばかり見ていたり、チカチカする光を見なければならない仕事をするようになったら、脳波に光過敏性が戻ってくるということがしばしばあります。光過敏性てんかんの方ばかりではなく、一般のてんかんの方も同様で、あまりチカチカする光にさらされないほうがいいと思います。チカチカする光の代表は、海面に反射する日の光とか、めらめらと燃え上がるたき火、もっと問題なのはテレビ、テレビゲームなどの人工的な画像です。最近の画像はやたらにチカチカするようなものが多く、人間の神経にとって好ましいものではありません。

  治療終結と再発

そういうようなことで、治療が始まりましたら、できるだけ精神的・肉体的健康を保つようにします。そして、治療をきちんと守って、なるべく早い時期に終結にもっていくのがよろしいと思います。そうすれば、例えば3年間発作がなく、脳波の上でもてんかん波に関係する波(棘波、鋭波、棘波結合、徐波など)が消えると、薬を減らしていき、それでも発作が起こらなければそれでてんかん治療は終結となります。終結にした場合、私どものところでは、その半数が1年以内に再発しています。ですから、薬を止めて、1年間発作がなければ、再発率はおそらく4〜5パーセントに低下すると考えられま。しかし、薬を止めてから5〜6年ぐらい経って発作の起こる方がまれにはいますので、完全に忘れきっても困りますが、そうなったら再び治療をすればいいと思います。再発しないように、日常生活療法を心がけることが大切です。

                 


 
  ケトン食

てんかんおよびGlut-1異常症に有効な食事療法!

脳はもっぱら、グルコースをエネルギー源としているが、グルコースが乏しくなると、脂肪の最終分解物であるケトン体を使って活動するようになる。この代謝経路の変更を利用した副作用の少ない食事療法をわかりやすく解説                

小児のてんかんを治療する手段は主に薬物療法です。今日では多くの優れた薬が作り出されており、殆どのてんかん波は薬で発作を止めることが出来るようになりました。しかし、色々な薬を使ってもてんかんの止まらない場合や、またある種の特殊な症候群ではこの本の主題になっているケトン食が役に立つことになります。

ケトン食療法(高脂肪・低糖質食)の勧め

本書は1973年に『小児のけいれん治療のためのケトン食の手引き』として発行されました。第2版まで発行しましたが、ケトン食療法の衰退期などで絶版になってしまいました。最近になってケトン食療法への関心が高まり、中蔦弘行さんというケトン食療法の伝道師が現れ、岡崎由有香管理栄養士という女神もケトン食の実行の体験を披露して参加して献立を作ってくれました。静岡てんかん・神経医療センターの藤原健樹名誉院長、今井克己医長、同院栄養管理室の皆様のご協力を得て、おなじみの第1版から再び上梓することができました。脳はもっぱらグルコースをエネルギー源として活動を行っており、脂肪を利用することが出来ません。しかし、グルコースが乏しくなると、ある時点で突然、脂肪の最終分解物であるケトン体を使って活動するようになります。この正確なメカニズムはわかっておりません。この代謝経路の変更が神経細胞の働きに影響し、種々の病気に良い影響をあたえることができます。特にてんかんの患者さん、lut-1異常症の患者さんには、治療法として確固とした地位を保っています。アトキンス療法はケトン食と近い関係にありますが、ケトン食療法ほど厳密ではありません。今後の研究がその作用の類似性や差異を明らかにしてくれると思います高脂肪食の効果を研究し、広めるにはまずケトン食療法を実行できる環境を作らねばなりません。本書はそのために書かれました

                               2009年11月30日      丸 山  博

ケトン食普及会

ケトン食というのは高脂肪極低糖質食のことです。つまりほとんど脂肪によってカロリーをとる食事で、糖質は殆んどとらず、たんぱく質は身体維持と成長に必要なだけ食べる食事です。ケトン食は治療食として使われますが、これからかなり広い応用が可能ではないかと考えています。治療の対象は、発作性の神経疾患(てんかん)の患者さん、それもほかの治療では発作が止まらない難治な発作を持つ患者さん、および糖質をエネルギーとして利用できない病気を持っている患者さん(たとえばGLUT-1欠損症)などです。 とてもよい治療なのですが、あまり普及していません。それは日本ではそれを実行するシステムがないからです。実行するには患者さんとご家族が納得され、指導する専門医師と専門栄養士がいて、困難を乗り越えて実行する必要があります これから、その治療を希望する人に、ケトン食を教えることのできる機関をお知らせできるようにシステムを作りたいと考えています。つまり現在準備中です。

リストに載ることを希望される医療機関はお知らせください。

医療機関名 

所在地 

電話番号

指導課名

医師名 

指導栄養氏名ケトコーチ氏名

および連絡先

(実際に食事を作り十分な知識を持つ方―たとえば患者さんの御両親など)

その他、連絡方法、指定曜日、時間など

事務局 〒 千葉県松戸市仲井町1−3  特定非営利活動法人 小児慢性疾患療育会  

ケトン食普及会(NPO法人小児慢性疾患療育会)

 
  
お知らせ
 
ケトン食普及会の本部を独立行政法人静岡てんかん神経センターへ移行しました。
 (http://www2.ocn.ne.jp/~ketodiet/)

  つぼみの会 へリンクします。

 
  松戸支部では平成23年7月26日(火)にケトン食講習会を行います。
 第1回ですので、内容は割合簡単なものです。
 人数に制限がありますので、満員になり次第締め切らせて頂きます。


  
 
  VSRAD”の適用

          工事中

       


 
            インフルエンザ

古代エジプトには既にインフルエンザと見られる病気の記録が残っています。その後も第一次世界大戦終戦の遠因といわれているスペインかぜなど毎年継続して感染流行しています。日本では古くは平安時代にインフルエンザらしき病気の記述があり、江戸時代には「お七かぜ」、「谷風」など幾度か全国的に流行し、悪い風が吹いて人々を病気にする風疫として認識されていました。

  インフルエンザウィルス

A,B,C型の3型があり、このうちA型とB型がヒトのインフルエンザの原因になります。C型は小児期に感染して呼吸器感染症の原因になります。

A型ウィルス粒子表面にあるヘマグルチニン(赤血球凝集素HA)とノイラミニターゼ(NA)という糖蛋白はHA16種、NA9種類があり、その組合せの亜型が多数存在します。「Aソ連型」はH1N1、「A香港型」ではH3N2など、この他に高病原性トリインフルエンザで有名になったH5N1などもあります。

B型は遺伝子が安定していて、免疫が長期間続きます

  感染

ウィルスが体内に入ってから2〜3日後に発症することが多いですが、潜伏期間が10日間に及ぶこともあります。ウィルスを排出するのは症状が出る少し前から感染後2週間位迄です。空気感染では飛沫の直径は1?m程度ですが、たった1個の飛沫でも感染を引起こすこともあります。1回のくしゃみで約40000個の飛沫が飛散しますが、径が大きいため空気中から速やかに取り除かれます。ウィルス生存時間は金属や紙などの上では約15分間、手などの皮膚では5分未満の生存期間となります。

  感染予防対策

免疫力の低下で感染し易い状態になりますので、栄養や睡眠を十分とることが大事です。

手洗いの励行、手で目や口を触らない。換気を行う(空気清浄機でも可)。部屋の湿度を50〜60%に保つ。まめにうがいをする。(ウィルスが口などの粘膜に付着し細胞内に20分位で侵入します)

  ワクチン

皮下接種は感染予防より重症化防止に重点が置かれたもので、免疫獲得割合は70〜90%です。(100万接種あたり1件程度は重篤な副作用の危険性があります)

基礎疾患を有する人や痙攣を起こしたことのある人、喘息患者、免疫不全患者などは「要注意者」とされますが、これらの人こそインフルエンザ罹患時に重症化するリスクが高く、予防接種のメリットがリスクよりも大きいのです。

  検査方法

鼻の奥の咽頭に近い部分を採取すると検出率が高い。

検査時間は1520分で結果が分かり、A、B型の鑑別も可能である。

ただし、発症直後はウィルス量が少ないため、陽性判定されないことがある。

発症後2日目が最も陽性率が高い。

  治療(抗インフルエンザ薬)

発症後早期(48時間以内)に使用しなければ効果は薄い。

オセルタミビル(タミフル) :カプセルとドライシッロプがある。

ザナミビル(リレンザ)  :吸入薬

ラニナミビル(イナビル) :一旦吸入すると5日間薬効が持続する

ペラミビル(ラピアクタ) :A、B型やH5N1型にも活性を示す。

  注意

解熱に使用できる薬剤は、小児ではアセトアミノフェン(アンヒバやナパなど)に限られます。ボルタレンやポンタール、アスピリンなどの非ステロイド性炎症薬は原則使用が禁止されています。また市販の総合感冒薬は効果がないです。


  予防接種(松戸市:標準的な接種年齢)H23年度

  ポリオ(集団) :生後3ヶ月〜1歳半  −41日以上の間隔をあけて2回服用

  結核BCG(個別):生後直後〜6ヶ月未満 −1回接種

  三種混合DPT〔ジフテリア、百日咳、破傷風〕(個別)

1期初回:初回生後3ヶ月〜1歳  2056日までの間隔で3回接種

    1期追加:1期終了後1年〜1年半 1回接種

  二種混合DT2期〔ジフテリア、破傷風〕(個別)

        :小学6年生      −1回接種

  麻しん風しん混合MR(個別)

      1期:1歳〜2歳未満    −1回接種

      2期:5歳以上7歳未満   −同上

      3期:中学1年生相当    −同上

      4期:高校3年生に相当   −同上

  日本脳炎第1(個別)

    1期初回:3歳から       −6〜28日までの間隔で2回接種

    1期追加:1期終了後概ね1年  −1回接種

  日本脳炎第2(個別)

        :小学校4年生     −1回接種

  ヒブワクチン(ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型

ヒトの鼻やのどにいて体力や抵抗力が落ちたときに髄膜炎、肺炎、中耳炎といった感染症を起こします。特に乳幼児の髄膜炎の原因の1つとなっています。

接種回数と間隔は、開始年齢によって接種回数が異なります。

     生後2ヶ月以上7ヶ月未満:4回接種(標準接種)

       1回目:       

2回目:1回目接種後4〜8週間後

3回目:2回目接種後4〜8週間後

4回目:3回目接種後概ね1年後

     生後7ヶ月以上12ヶ月未満:3回接種

     1歳以上5歳未満:1回接種

  肺炎球菌

細菌による子どもの感染症のひとつです。鼻の奥に保菌していて、体力や抵抗力が落ちたときに中耳炎、副鼻腔炎、肺炎、菌血症、髄膜炎といった病気を引き起こします。

ワクチンを接種することで細菌性髄膜炎や菌血症を発症を減少させます。

     生後2ヶ月以上7ヶ月未満:4回接種(標準接種)

       1回目:       

2回目:1回目接種後27日以上あけて

3回目:2回目接種後27日以上あけて(1歳未満までに完了)

4回目:60日以上あけて(1歳〜13ヶ月)

     生後7ヶ月以上12ヶ月未満:3回接種

     1歳以上2歳未満 :2回接種

     2歳以上5歳未満 :1回接種